Containers

ギターを持ち歩くにはちょうどギターの縁をかたどったフォルムのケースを使用することが多い。背負って街を歩けばあの人はバンドをやっているのだなと一目で分かる。外殻が何製か、内部にクッションが入っているかといった基準からソフトケース、ギグバッグ、セミハードケース、ハードケースと分類されており、私の常用するものはギグバッグに相当する。

中学生になるかならないかの頃にエレキベースという楽器を知り、俺もやりてーとはなをグイングイン垂らしたが、特に音楽に関する教育を受けてないし、突然親に頼みこんだら変すぎるという心のはたらきに遮られすぐに始めるには至らなかった。仮に音楽でバカ売れしたいとして、文脈をナチュラルにしたいしたいという考えではチャンスはつかめん。近年ではSNSを利用し、個人でのプロモーションを通じて多くの若者が各々の夢を叶えている。比較的誰の足下にもチャンスが転がっている時代になったとはいえ、自ら行動する者だけが目標に到達できるという点は揺らがない。たいへん興味深い話題ではあるが、このテーマは後日我々の楽曲へ昇華することとして一旦く。文脈さえあればとモヤモヤしていたところ、同じ水泳部の友人が近所のキリスト教会でギターを弾いているという情報を得た。教会?とは思いながらも翌土曜日には同行し、初めてアコースティックベースに触れ、エレキがよかったのだが…となった。また当時の日本のヒット曲のコード進行が多数掲載された雑誌『月刊歌謡曲』(2013年事実上の廃刊)を別の友人から調達し、その裏表紙裏の通販広告に総額2万切りのエレキベース スターターパックを見つけたことが先の機会と同時した。というわけで文脈に関する条件が揃い、ゲッカヨを手に親を訪ねた。もともと物をねだらない子であり、「欲のない子」と呼ばれていたことが幸いしたのか、リクエストは即日受理された。

初めてのベースギターを入手してから十数年経つが、ケースを背負って街を歩いたり電車に乗ることがまあまあハズい。ギターの形したケース背負ってたらギターやってんのアピールしてるみたいな感じになるから、それがすごい嫌で、無理なんやと思う。上半身鍛えてタイトフィット着るやつみたいな恥ずかしさがあるんだよなーなんか。ハードケースは直方体であることが多いのでその感じは出ないが、高価で手が出なかった。というか重すぎて日常的な持ち運びには向かない。だから当時はソフトケースを担いで自転車に乗る必要があり、移動中は細心の注意を払った。地元の中学に通っているからいつ道辺で顔見知りと出会でくわすやわからず、絶対に見つからないルート取りで教会へ向かわねばならない隠れキリシタン的な状況にあった。信号待ちをしていると見覚えのある男が対岸にいる。同級生であることは間違いないが、名前までは知らない。奴にとってもおそらくそう。だが念のため迂回しておくか。という具合に私は自宅と教会との往復にあたり隠密行動の限りを尽くし、後にビッグ・ボスと呼ばれた。

先日縁あって新しい楽器を入手した。チャップマンスティックといい、チャップマンとは開発者のエメット・チャップマンに由来する。タイプは色々あるが私の使用するものは10本の弦が張られており、両手でタッピングして演奏する。先日オンライン英会話を受講している際に画面に映り込んでいたチャップマンスティックについて尋ねられ、これは右手と左手でタップして音を出すんだと答えた。英語でということもあり教則動画みたいになって自分でウケた。エレキベースとは異なり、ボディを持たないため軽い。ハードケースしか所持していないが片手で持ち運ぶこともできる。また、長細い直方体に収納された恰好は運搬の際にもバンド屋だと悟られることはない。というかそもそもこの楽器はあまり認知されていない。つまり上のようなハズいことにはならないため、割と気に入っている。翌々日には融解建築のライブが控えているが、そこで初出しする。ベースも弾くわけだからその間スタンド的なものに固定しておきたいが正規品は130ドルするらしく、フリマアプリの売上金が19000円貯まっているとはいえなかなか手を出す気にはなれない。だから当日はその場で用意できるものでやり過ごすだろうが、私がやり過ごしている様を是非ご覧いただきたい。

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